[特別コラム] 投資と競馬:ジャパンカップと有馬記念が体現する世界政治の転換
今回は年末の余興で競馬に関する記事を書きました。株や先物をやっている人で馬券を買う人は少なくないはずなので、少しは有益な情報になるかもしれません。
みなさんは、何を基準に予想していますか?アプローチは千差万別でしょうが、ブログ主の場合、投資も競馬も「ちょっと変則」なんですね。基本は表のデータなんですが、そこに自分なりのスパイスを効かせています。スパイスとは何かといえば、自分なりに「読み込んだ情報」なんです。それを実際のポジ取りや馬券に反映させるわけです。といっても、インサイダー情報のたぐいじゃなく、公開されているソースから「主催者の思惑」を読み取る作業です。
競馬というゲーム
競馬にはJRAという明確な主催者(胴元)がいます。ブログ主が馬券を買う大前提は、競馬は主催者がトータルに管理しているゲームであり、馬券を買う行為とは強い馬を割り出す作業ではなく、JRAが「勝たせたい馬」を推し量る作業だと思っています。
といっても八百長が行われているのではないでしょう。関係者は一部の人間を除いて「ガチンコ」で勝負に挑んでいるはず。でなければ士気が下がり、競馬はこんなに長続きしてこなかったでしょう。
ではレースはすべて「ガチンコ」で挙行されているのかといえば、おそらく違います。なぜそう思うかといえば、「非常に意図的・人為的」な出馬表やレース結果が日々生産され続けているからです。その気になって眺めれば、不自然なことが正々堂々と行われているんですね。(これについては後述の有馬記念回顧で具体例を示します。)
もっと正確にいうなら、JRAは膨大なデータと一次情報をもとに、競馬界全体(近年では世界の競馬サークル)を神の如き視点で観察し、もっとも蓋然性の高い勝ち馬、連対馬(1、2、3着)の「予測」を立ててレースを組んでいる、と考えられます。JRAはその「予測」能力に秀でているがゆえに主催者として君臨できるのです。彼らは堅いレースから荒れるレースまでありとあらゆるレースを「制作」するなか、日々マーケティングにいそんしんでいます。G1レースは目玉商品ですが、そこにはJRAなりの「世相の読み」さえ示されているから、競馬はおもしろいのです(少なくてもブログ主にとって)。
競馬と投資は似て非なるもの
競馬サークルを投資市場と読み替えれば、同様のことは投資の世界にも当てはまります。投資の世界にはJRAのような明示的主催者はいませんが、それに近い存在はいます。いわゆる国際金融資本とそれに近い政官財のエリート層です。
一流の投資家やトレーダーは、これら既得権益層の作り出す政治状況や経済状況から「精度の高い予測」を行い、それに基づいて勝つ確率のもっとも高いポジションを構築します。
たとえば、米中貿易戦争という状況から何を読み取るかは、前走の海外G1を回避したアーモンドアイがなぜ有馬記念に出走したのかを読み取るのと、そう違わない作業だと思います。
大事なのは、彼らが一般投資家(一般の競馬ファン)に読み取ってもらいたい意図と、彼ら自身の本音(本当の意図)は大抵の場合、同じではないということです。
投資でも競馬でも負けないために必要なのは、主催者側の意図をなるべく正確にキャッチする「読解力」と、己の感情や思想とは関係なく、読み取った「本当の意図」に逆らわずにお金を投ずる投資家(馬券師)の「謙虚さ」です。
トランプとブレクジット
米中貿易戦争の表の意図は自由主義と独裁主義の覇権争いですが、「本当の意図」はむしろブロック化による自由主義経済の強化です。アングロサクソン=ユダヤ主導の自由経済圏から、中国と中国シンパを締め出すこと、それが英米支配層の最終結論なのです。彼らは中国が「近代化」不能な体制であり、自由主義経済のルールを共有できない歴史的宿命をようやくにして悟ったのだと思います。
この場合、イギリス離脱後のEU(大陸ヨーロッパ)も「中国シンパ」に含まれますから、ブレクジットはとても時宜にかなった行動であり、おそらくそのベースには米英の密約に近い合意があったと思われます。
時代は確実にポスト新自由主義の時代へ移行しているのですが、新自由主義時代の(民主党系リベラル主導の)古い価値観や既得権益から抜け出せない旧勢力はマスメディアを尖兵に、いまだにトランプ大統領をくさし、ボリス・ジョンソン首相や安倍晋三首相にネガティブな印象を植え付けようと無駄な抵抗にいそしんでいます。
有馬のアーモンドアイは客寄せパンダ
競馬の有馬記念もまた表のニュースに主催者の意図は表明されていたと思って間違いありません。このレースの予想においてまず読み取るべきは、アーモンドアイに対する主催者の思惑です。
ブログ主は、海外G1を回避した彼女が有馬に出走を決めた時点で、「彼女の勝ちは望まれていない」と感じました。その体調云々とは無関係に、アーモンドアイはすでに「十分勝ってしまった」ため歴史的役割はすでに終えているからです。
JRAの鉄の掟
それってどういうことか?
まずは以下のツイートをご覧ください。
余興: 有馬記念
鉄の掟が通用するならアーモンドの勝ちはなし。3着付けが妙味か。軸は両隣のどちらか。ヒモはリスグラ、菊花賞馬、ジャパンカップ馬。おさえ5番。大穴14番、1番。— クリプトモネダス (@bchmatters) December 22, 2019
鉄の掟とは何かといえば、あまたの歴史的名馬が証明するように、最多G1勝利数は7に設定されているという掟のことです。8つ目のG1を勝つことは、あのディープインパクトにさえ許されなかったのです。
そしてこの「歴史的名馬=G1 7勝」という初期設定を担ったのはシンボリルドルフという往年の三冠馬です。その意味で、JRAの競馬はいまもシンボリルドルフの敷いたグレード制の掟の中で運用されていることがわかります。
たったこれだけの「情報を読み取る」だけで少なくもアーモンドアイの単勝や彼女を1着の軸に据えた馬単や三連単は買わずに済みます。
国際化の流れ
今年の有馬記念においては、もうひとつ重要な情報が仕込まれていました。JRAが国際化の流れを受け入れて以来、本当に久しぶりに今年のジャパンカップは海外馬の参戦がゼロでした。「すわ、競馬鎖国復活か?」といわんばかりの動きです。
政治の世界に置き換えれば、トランプやボリス・ジョンソンやいわゆる極右政党の台頭に示されるように、グローバリスムに抗して「ナショナリズム」が台頭してきていると(メディアによって喧伝される)現下の状況をなぞるかの印象を与えます。
しかし、有馬記念には海外でG1を勝ってきたリスグラシューというライバル牝馬が出走してきました。彼女は春シリーズのグランプリである宝塚記念を勝ってG1馬入りするとその余勢でオーストラリアのG1を勝ってしまいました。
方やアーモンドアイは同じ海外G1馬となる機会を「捨てて」国内戦の有馬記念を選択していましたから、両馬は戦歴面で対照的な性格をもつと言えます。
そして先ほどの有馬記念では、リスグラシューが圧勝し、アーモンドアイは掲示板にすら載らない惨敗。しかも鎖国的ジャパンカップの勝ち馬スワーブリチャードも馬券から排除。
これはイギリス総選挙における保守党の圧勝を受けた結果と読めるでしょう。イギリスは「ナショナリズム」に与したように見えてそうではなく、むしろグローバリスムの有り様を変革するためにあえて大きな体制を転換してしようとしているのだと思います。そもそもイギリスこそグローバリズムを切り開いた張本人、あの大英帝国の末裔ではありませんか。
ではブレクジットは何を意図しているのでしょうか?
- 自由主義は続けるが、サプライサイド一辺倒、格差拡大一辺倒のレーガン=サッチャーの新自由主義は卒業する。
- 同時に自由主義の障害でしかない、独裁的かつ「近代化以前」の中国主導グループは極力排除する。
- しかしてトランプ=ジョンソンの「新・新自由主義」経済体制へ移行したい。近代民主主義国家の法と秩序を守りつつ、庶民(のふところ)にもう少しやさしい「持続可能な」自由主義体制への移行を目指す。
JRAはジャパンカップと有馬記念という二大競走を通じて、ナショナリズムへの回帰ではなく新たな自由主義グローバリズムへ、という時代の流れを見事に体現してみせたといえるのではないでしょうか?安倍首相の親米、親英、新イスラエル姿勢がいかに適切な判断に基づいているかわかろうというものです。
有馬記念予想のポイント
せっかくですので、今回の予想で重視したポイントを列挙しておきましょう。
不自然な出馬表
騎手の騎乗位置に注目すると、もっとも目立つのが有馬記念5枠10番サートゥルナーリア騎乗のスミヨン騎手。
前日の阪神メインレース・阪神カップでもスミヨンは5枠10番で出走。ご丁寧にも、フィアーノロマーノというイタリア語つながりの馬名の馬に乗って2着連対。これは有力な示唆。⇛10番サートゥルナーリア有力(軸候補)
馬名
これもサートゥルナーリアに注目。サートゥルナーリアとは古代ローマの無礼講。冬至の祭りで、一節ではクリスマスの起源とも言われています。
サートゥルナーリアは昨年同時期に行われた2歳G1ホープフルステークスの勝ち馬。今日はまさに冬至にあたり、馬名から1頭指名とも言える状態でした。また、ホープフルステークス当日のプレゼンター葵わかなさんが今日の有馬でもプレゼンター。⇛10番サートゥルナーリア有力(軸候補)
ライバルの対照的戦歴
既述のようにアーモンドアイとリスグラシューの戦歴対照は明らか。今回リスグラシューの主戦レーン騎手には特別な出走許可を与えていました。まさに勝ってくれと言わんばかりの好待遇。
近年のG1の流れを見ても国際G1好走馬の優遇は実証済みです。海外馬不在のジャパンカップ勝ち馬スワーブリチャードが惨敗したところからも、あからさまな国産(純血)路線は歓迎されていないことがわかります。⇛2番スワーブリチャードは押さえまで。
当該レースの傾向
好走条件は使い減りしていないこと。秋G1での好成績、とくに宝塚記念、天皇賞秋、菊花賞の連対馬は重視すべき。⇛6番リスグラシュー、9番アーモンドアイ、7番ワールドプレミア浮上も、戦歴から9番は軽視。
世相ネタ
マーケティング的観点からは世相ネタが喧伝されます。今年の場合、誰もが注目するのは令和。4枠の馬名は、ワールドプレミアとレイデオロでレイワなのでどちらかが馬券に絡む可能性大。こういう大レースではあえて「わかりやすく素人受けする」ネタに乗るのが定石。プレゼンターの葵(青い)さんからも青の4枠に推し。⇛7番ワールドプレミア、8番レイデオロ浮上。ラグビーワールドカップ関連から「ワールド」プレミアに加点1。
以上の諸要素から、実馬券は軸10番、相手6、7、8、9番を中心に馬券を買いました。2、3、4人気の組み合わせで三連単57,000円超の配当はとてもありがたかったです。
まだまだだなと思うのは、それでも9番をばっさり切り捨てず3着付けの三連単に「無駄な」投資をしたこと。それにしても掲示板にすら来させないとは「鉄の掟」恐るべし!
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