[投資のヒント] 大麻合法化で大麻産業の未来は明るいのか?北米の関連銘柄紹介
近年、世界では大麻合法化の動きが加速しています。2018年カナダが全国で合法化に踏み切り、アメリカにも同様の動きがあります。すでにカリフォルニア州やワシントンDCなどでは合法化済み、ニューヨーク州も追随するようです。アジアでもタイが合法化し、韓国も合法化に向けて動いています。日本でも厚労省所管の公益財団法人が医療従事者向けの講習会を開いており、着実に一部「解禁」に向けて動いているようです。
しかし一般の日本人からすれば「ここへ来てなぜ急に?」というのが正直なところでしょう。今回はその背景と大麻とはそもそも何かについて考えてみたいと思います。最後に大麻銘柄の紹介を兼ねて簡単なチャート分析を行っています。
大麻合法化の背景
大麻合法化の背景はズバリ、ビジネスでしょう。いやらしい言い方をすれば、これまでのように「禁じて儲ける」より「解禁して儲ける」方が得だと考える人たちが増えたのです。企業側と政府側の思惑が一致したわけです。
NCIの変化
では、なぜ人々の考え方が変わったのでしょうか?
アメリカのお墨付きが出たからです。アメリカは自ら大麻を非合法化した国ですが、数十年経って医学的知見を否定できなくなり、非合法化自体を見直し始めたのです。その流れはアメリカの国立がん研究所(NCI:National Cancer Institute)の動向によく表れています。
抗がん剤への疑問
日本のメディアに大きな責任があると思いますが、化学合成系の抗がん剤治療の旗振り役だったNCIはすでに1985年に「抗がん剤は全く効果がなく、無力である」と証言しています。
大麻の抗がん作用
そして2015年には大麻の抗がん作用を正式に認めています。
化学合成された抗がん剤治療が主流の現代にあって、大麻由来の生薬的な抗がん薬が一般化すれば、多くの患者が痛みや副作用から解放されることになります。
大麻は人類が栽培した初めての植物ではないかと言われるくらい太古からのつきあいがある植物です。非合法化の方がむしろおかしな話だったわけです。
アメリカが大麻を禁じた理由
ではなぜアメリカは大麻を禁止し、GHQは日本にもそれを強いたのかという疑問が湧いてくるのですが、この話への深入りは避けたいと思います。
ただ簡単に説明するなら、石油産業の発展にとって(石油から作るプラスティック、合成繊維、医薬品などの巨大なビジネス機会にとって)、成長が速くどこでも作れる大麻は最大のライバル、邪魔な存在だったから使用を禁じたのです。アメリカ政治は石油を消費するビジネスを国策の柱にしたい人々が牛耳っていたことになります。
大麻利用の歴史は古く中央インドやインドに始まり、世界中に普及しました。日本でも神道や相撲のしめ縄は大麻で作られるように古くから親しまれていた植物でした。
アメリカにおいても入植初期は衣類などの貴重な素材として重宝されていたのですが、黒人奴隷が連れ込まれ、綿花栽培が主流になたあたりから綿に素材の地位を奪われます。同時に、余った大麻を奴隷労働者たちが苦痛を和らげるためにたしなむようになり、いわゆるドラッグ利用が普及しました。
アンチ大麻主義者たちはドラッグにつきまとう暗いイメージを利用して大々的に大麻撲滅キャンペーンを展開し、大麻の非合法化を進めたのです。
そういうわけなので過剰摂取をしない限り大麻は無害な植物です。これはNCIに限らず世界中の健康機関が立証している科学的事実です。それどころか薬効の高い優れた資源作物なのです。
そもそも大麻ってなに?混乱しやすいので整理
同じ繊維系の植物を指しているのに、麻、大麻、大麻草、ヘンプ、マリファナなど複数の呼び名があり、非常に紛らわしいです。
またイメージの問題として、どうしても麻薬の問題が絡んでくるので、大麻(たいま)と発音すればネガティブな危ない草ですが、麻(あさ)と言えば神道ともゆかりの深い涼やかな草です。
整理しましょう。
麻(あさ、英名カンナビス)は最も広義なことばです。カンナビスには、大麻草の他にも、亜麻(リネン)、苧麻(ちょま、ラミー)、ジュート麻、マニラ麻など様々な種類があります。
日本で衣料用に使われるのはほとんど亜麻(白く絹のような光沢をもつ)、苧麻(薄く黄色がかった白色)、大麻草(黄金色)の3種類。通常、麻と表示されている衣料品は亜麻製か苧麻製で、もし大麻製の場合は大麻所持取締法の関係で指定外繊維の表示が義務付けられているとか。
ではマリファナとは?ヘンプとの違いはカンビノイド組成の違い
下図のようにマリファナとヘンプは見た目も化学成分も異なる別々の植物です。日本ではどちらも大麻草と呼ぶだけです。
マリファナとヘンプの最大の違いは化学成分の違いにあります。マリファナとヘンプには麻独特のカンビノイド成分が100種類以上含まれています。
- このうち、いわゆる麻薬的な作用(専門的には向精神作用または精神活性作用)を持つカンビノイドをTHC(テトラヒドロカンナビノール)と呼びます。THCの多い少ないがヘンプとマリファナの区別を生んでいるのです。
一方、マリファナとヘンプには向精神作用を持たないCBD(カンナビジオール)というカンビノイドも含まれています。CBDは中枢神経系や免疫系の受容体に働きかける薬効を持つため医薬品(例えば医療大麻)に用いられています。
以下のサイトの記述が参考になりますので引用しておきましょう。
麻には、薬用型、中間型、繊維型の3つの生理的な違いによる品種がある。この違いは、THC(デルタ‐9 テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)の2つの化合物の割合で決まる。THCはマリファナ効果のある化合物である。
- 薬用型は、THCが2~25%含まれ、CBDをあまり含まない。
- 中間型は、THCとCBDが同じくらい含まれるが、作用としては、THCに支配される。
- 繊維型は、CBDがTHCよりも多く含まれ、THC含有量も0.25%未満の品種である。CBDには、THCの精神作用を打ち消す働きがあるため、繊維型を煙にして吸い込んでもいわゆる「ハイ」な気分にはならない。
大麻製品
麻薬として扱われるマリファナとはマリファナ種の大麻草の花や葉を乾燥させ、タバコ様にして吸引するものを言います。花や葉を樹脂状にしたものをハシシ(Hashish、インドではチャラス)、花のみを乾燥させたものをガンジャ(Ganja)と呼ぶそうです。これに対してヘンプのカンビノイドにはTHCはほとんど含まれずCBD中心なので麻薬には使いようがありません。
- ハシシはアラビア語で「草」を意味し、現在でもモロッコは一大産地。チャラスは北インド特産。
- インドで一般的大麻製品にはガンジャ、チャラス、バングーの3種類があり、最も常用されているのはバング―(Bang)です。バング―は大麻の花と葉をすりつぶしてペースト状にし、ミルク、ギー(バターのようなもの)、スパイスを加えたもの。
ビジネス面から見たヘンプとマリファナの違い
以下の図をご覧になるとわかりやすいと思います。両者は用途が異なり、潜在的な市場規模がまったく違うことがわかります。
マリファナの用途
一律 “Getting High” と書かれているのは、主に麻薬(闇市場)や嗜好品(合法大麻)として用いられてきたからですが、現在の世界的合法化の波はマリファナ種の市場を大きく拡大することは確実です。
医療
マリファナに含まれるTHCには様々な薬理効果があり、以下のような医療製品に利用されています。
- 神経性・慢性の疼痛に対する痛み止め
- 抗炎症剤
- 抗腫瘍剤
- 食欲増進・吐き気を抑える薬、
- 睡眠促進剤
- 抗うつ薬
- 多発性硬化症治療薬(サティベックス)
- がん治療などの終末医療
- 全身消耗を伴うエイズ治療
- 小児癲癇(てんかん)の特効薬としての研究
嗜好品
いわゆるマリファナで「ハイになる」とは、アルコールのように血圧・心拍数が上がって興奮状態になるのとは逆の状態、すなわち陶酔感が強く、リラックス効果が高い状態を指します。英語では、マリファナを大量に吸って朦朧とし体が重くなったように感じる状態を “stoned” と表現しますが、そういう「重い状態」が「ハイ」の内実です。覚せい剤使用者の幻覚作用(妄想)などとは明らかに異なるのです。
ヘンプの用途
上の画像には自動車部品、石けん、コンクリートと書かれています。しかし下の画像に示すようにヘンプの用途はもっと多種多様です。ヘンプの大きな特徴は捨てる部位がないほど有用な植物だということです。
大麻取締法のせいでいくらネガティブな扱いを受けても、ヘンプはそもそもTHCを含まない無害な植物です。実際、七味唐辛子には麻の実(おのみ)としてヘンプの実(種)が入っており、日本人は知らずに常用しているのです。
以下のサイトに的確なまとめがあるので引用します。
種子用途・・・食品・飼料として、種子を収穫します。ヘンプシード(麻の実)や麻の実オイルなど良質なタンパク質・脂質・ミネラルが含有されている。
繊維(バイオマス)用途・・・茎の表面の靭皮繊維を、衣料用繊維、パルプ(紙の原料)、ロープ、断熱材、強化プラスチックの繊維原料などに。茎の内側の麻幹(木質部)は産業用資材(家畜の敷料、コンパネ、建材など)に利用されます。
CBD(カンナビジオール)用途・・・カンナビノイド(大麻に含まれる化学物質郡)の中で、陶酔作用が全く無い化学物質。てんかん・抗癌作用が期待され注目を浴びている。高CBD含有の産業用ヘンプ品種も開発されている。
大麻関連の参考サイト
医療用途、特にがん治療に関する公式の情報サイト:アメリカ国立がん研究所が発行するPDQ®(Physician Data Query)の日本語版
医療大麻情報サイト
麻全般に関する情報サイト
大麻銘柄
世界的な合法化の機運に乗じて「大麻フリー先進国」カナダの大麻関連企業が続々とアメリカ市場への上場を果たしました。代表銘柄の現況を分析してみました。
🇨🇦 Canopy Growth(CGC)
カナダの大麻製造業者。ニューヨーク証券取引所上場。業界最大手。
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🇨🇦 Cronos Group(CRON)
カナダの大麻製造企業。ナスダック上場。会社の規模は小さいものの、快調なチャート。市場では業界大手を上回る成長を見込まれているようです。
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🇨🇦 Aurora Cannabis(ACB)
カナダの医療用大麻製造業者。ニューヨーク証券取引所上場。業界売上2位。チャートを見る限り、Wトップ形成の可能性があり(しかも二度目の天井でMACDのピークが下がり、NegDivを検知)、強気にはなれません。
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🇨🇦 Aphria(APHA)
カナダの大麻製造業者。カナダ売上3位(業界全体では5位)。ニューヨーク証券取引所上場。チャートでは業界の2位のオーロラ・カンナビスと相似形で、競争不利と見られているようです。
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🇺🇸 iAnthus Capital Holdings(CSE:IAN)
アメリカ本拠の大麻投資・M&A企業。カナダ証券取引所上場。最高値を目指せるか?
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🇺🇸 Innovative Industrial Properties(IIPR)
アメリカ本拠の、医療用大麻プラントの賃貸・売買を取り扱う不動産業者。ニューヨーク証券取引所上場。押し目らしい押し目なく非常に強い動きですが、いまから手を出すのはちょっと遅いかもしれません。買うなら調整後でしょう。
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🇺🇸 MedMen Enterprise(OTC: MDMNFF)
アメリカの大麻小売業者。相対・店頭取引市場に上場。上場後日が浅いので日足で掲載。IPOによくある上場時高値からの調整パターン。
MedMenはアップルストアを真似たおしゃれな店舗を出店し、大麻=ドラッグイメージの払しょくを図っていますが、チャートを見る限り、この先どうなるかは何ともいいがたい状況です。
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🇺🇸 大麻ETF:ETFMG Alternative Harvest(MJ)
ニューヨーク証券取引所上場。大麻関連のETFはいくつかあるのですが最大の時価総額を誇るのがここ。他は圧倒的な小規模ファンドです。チャートは情勢微妙。強いのか弱いのか、もう少し様子が見たいところです。
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MJは主要な大麻製造業者のほか、タバコ企業もポートフォリオに組み入れているのが特徴です。それには理由があって、恒常的な低減傾向にあるタバコ市場あるいはビール市場では、大麻市場への参入で新たな収益源を作ろうとしているからです。
医療用途や他の産業用途を含めれば大麻市場のポテンシャルは非常に大きく、2030年頃にはタバコやビールの市場規模に並ぶのではないかと言われています。
アメリカ・カナダ主要大麻関連企業売上ランキング
国籍、会社名(上場場所:ティッカー)、四半期ベース売上高の順でトップ10を記載します(データは2019年2月14日現在のもの)。
- 🇨🇦 Canopy Growth(NYSE:CGC) 8,300万ドル
- 🇨🇦 Aurora Cannabis(NYSE:ACB) 4,760万ドル
- 🇺🇸 Trulieve Cannabis(OTC: TCNNF) 2,830万ドル
- 🇺🇸 KushCo Holdings(OTCQB: KSHB) 2,530万ドル
- 🇨🇦 Aphria(NYSE: APHA) 2,170万ドル
- 🇺🇸 MedMen Enterprises(OTCQX: MMNFF) 2,150万ドル
- 🇺🇸 Curaleaf(OTCBB: CURLF) 2,140万ドル
- 🇺🇸 Charlotte’s Web Holdings(OTCQX: CWBHF) 1,770万ドル
- 🇺🇸 Green Thumb Industries(OTCQX: GTBIF) 1,720万ドル
- 🇺🇸 CV Sciences(OTCQB: CVSI) 1,360万ドル
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