[独自コラム] 仮想通貨とAIの怪しい関係

2017年12月15日仮想通貨・暗号通貨・クリプト, 独自コラム

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ビットコインは巨大AIネットワークの構成要素

今回は文字ばかりの投稿になる。興味のある人には興味深い話だと思うので、探求のきっかけに利用してもらいたい。

「マネーボイス」というサイトに気になる記事を見かけた。簡単にいうと、ビットコインのブロックチェーン、その拡張としてのイーサリアムとは何かといえば、世界中のAIを相互連結してひとつの巨大AIネットワークとして稼働させるためのプラットフォーム技術なのだという。通貨機能はそのほんの一部に過ぎず、世界中のAIのネットワーク統合が最終目標だというのである。

事情通クイン・マイケルズ氏

にわかには信じがたい話なので、検証のため、記事に出てくるクイン・マイケルズ氏(Quinn Michaels)の動画をYoutubeで何本か観てみた。彼はいわゆるナード(コンピューター・オタク)のひとりでIT業界の裏事情にやたら詳しい。大学でもAI回りの勉強をしてきた人のようだ。

確たる物としての証拠がないので断定はできないが、論理的帰結としてはありえる話だと思った。陰謀論と捉えられがちな分野だが、今後の世界の覇権をめぐって、政府・軍を巻き込んだビッグビジネスの尻尾をつかまえた、という感じで理解した方がいいかもしれない。

彼の “リサーチ” の結論はかなり衝撃的だ。これはAIをめぐる世界的覇権争いなのだという。以下、簡単にポイントを挙げてみる。

ビットコインの出自はダークウェブ

ブロックチェーンはダークウェブ(dark web)で開発され、非合法取引の決済手段として発展した。インターネットにはグーグルやヤフーのインデックスに登録されないアンダーグラウンドなサイトが、通常のオープンサイトの数百倍規模で存在し、両者をまとめてディープウェブ(deep web)と呼ぶ。この辺りの事情について興味のある方は以下の記事を参考にしてほしい。

参考:Dark Webの謎に迫る

参考:隠されたインターネットを探る「ディープウェブ」検索エンジンとは

ビットコインはダークウェブの危ないお金のやりとりに使われていた(いまでも使われている)が、2014年頃から一般の投資家も参加するようになったのだという。

ビットコインはAIと天才エンジニアの産物

ブロックチェーンの開発に携わったのはベン・ゴアールツル(Ben Goertzel)という人物で天才的なAI科学者だという。先ごろサウジアラビアの “市民権” を得たAIロボット “ソフィア” の生みの親だ。しかし開発といっても細部の設計はAIが行い、人間は修正・最適化担当なのだという。

サトシ・ナカモトは原案を出したかもしれないが、実質的な開発はゴアールツル氏周辺が行った。発明者が表に出られないのは、ビットコインの出自に後ろ暗い部分があるためだ。後述するように、ゴアールツルはいま、AIの相互接続に向けて動きを強めている。

国策企業パランティア

パズルのもう一つの主要ピースがパランティア(Palantir)というビッグデータ解析企業である。Palantirという単語は、トールキンが『指輪物語』で創作したフィクション言語Quenya語で「遠視」(すべてを見通す水晶玉)を意味することば。以下の記事から会社の概略を引用しよう。

もともとパランティア・テクノロジー社は2004年にスタンフォード大学のおひざ元のパロアルトでAlex Karp氏(アレックス・カープ)が創業し、PayPalの創業者でもあるPeter Thiel(ピーター・ティール)も参加するかたちで始まりました。 もともとPaypalは決済を行う会社として世界中のクレジットカード決済を扱っていたわけですが、その中でカードの不正利用や不審なお金の動きを感知するシステムがあり、その技術をコアに「情報を集め、分析し、テロや不正防止に役立てる」というところからサービスは始まったようです。実際に最初の顧客は米国CIA(米国中央情報局)であり、同時に資金と技術提供も受けていたそうです。その後も国の重要機関からの発注を受けていたそうですが、それがゆえに対外的には顧客名やサービス内容等含め秘密にされてきた経緯があるといわれています。

Palantir社長のアレックス・カープは、PayPalでマネーロンダリング対策として、トランザクションのパターンから不正送金を見抜く技術を開発し、これにテロ資金の流れを掌握したいCIAが注目したという経緯。つまりITと国策の合作企業というわけだ。キーパーソンはPay Palのピーター・ティールである。この人、初期から仮想通貨に関わっている。イーサリアムをつくらせたのも彼だ。

SingularityNetとシンギュラリティの意味

ゴアールツルはSingularityNetのCEOとして、いまAGIトークンのICOを行っている。会社の創設趣意は世界中のAIが共通で使えるオープン・プラットフォームの構築である。プロトコル(スマートコントラクト)、トークン、API、マーケットの4層(レイヤー)でAI間の相互運用(interoperability)を可能にする。

ITジャーゴンのかたまりだが、要は世界中の大学・研究機関、民間企業、金融機関などで個別に稼働しているAIを相互に結んで巨大なAIネットワークを構築するという意味になる。イーサリアム上で稼働するトークン名のAGIとはArtificial General Intelligenceの略称で、AIより上位の汎用AIという概念だ。AIをネットワーク化することで相乗効果以上の”何か”をつくりだそうとしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あまり長くなってもいけないので大筋だけ搔いつまむと、この”何か”の部分でPalantirとSingularityNetがつながってくる。

Palantirは政府系からのアプローチであり、SingularityNetは民間系からのアプローチだが、両者を統合すれば、裏も表も含めたインターネット全体を統制もしくは監視することが可能となる。

通貨体制と軍事体制の再編?

“decentralized” や “trustless” の本当の意味はおそらくここにある。政府を介さないということは、課税されない新たな経済圏の創設を意味する。金融機関などの中抜き業者が排除されれば、究極的にはPalantirやSingularityNetが金融機関のかわりに行うことになる。今後、IoTや各種自動化技術などを通じて実体経済(リアル経済)がネットとのつながりを深めれば、主導権はAIネットを統制する側に移る。その際の “AI化国家” のインフラ作りを進めているのである。

こうした与太話にも聞こえかねない計画がなまじウソとも思えないのは、アメリカ側の動きに焦りが感じられるためだ。どうも後手後手に回っている印象がある。

直近のニュースで言えば、サウジとイスラエル周辺が騒がしくなっている。サウジで有力な王子が排斥された。サウジはゴアールツルが開発したソフィアというAIベースのアンドロイド・ロボットに “市民権” を与えた。リヤドでシンギュラリティ国際会議が開かれ、ティールが基調講演を行った。トランプとサウジ国王がその場でオーブ(地球支配の象徴の光る球体)に手をかざした。エルサレムを公式の首都認定して大騒ぎになっている。

こうした一連の動きに先駆けて、ロシアは国家が管理するクリプトルーブルの発行を決めた。1990年代には、プーチン主導のもとアフガニスタンは遷都し、巨大な人工都市アスターナ(Astana) を建設している。ここは「ウラニウムの世界首都」(world capital of uranium)と呼ばれるように軍事研究開発拠点でもある(北朝鮮の核にも当然絡んでいるはず)。

軍事ということは、当然のことながらインターネット(AI)や通貨(暗号通貨)と無関係なはずがない(深入りは避けるが、これに対抗するアメリカの秘密軍事開発拠点はラスベガス周辺なのだという)。

透けて見えてくるのは、アメリカ=イスラエル=サウジ連合vsロシア=アフガン=中国連合の軍事的・地政学的覇権争いである。

Astana=Capitalのシンボリズム

ここは語学サイトではないが、興味深い話なので書いておく。

Astanaの語源はカザフ語でcapitalの意味である。Astanaはペルシャ語Astaneから来ている。Astaneは聖なる者の坐す場所の意。2008年、ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領にちなんで、”Nursultan” への改称が検討されたが、大統領自身が案を退けたという。いずれにしても、Astanaということばは汎用的な意味で、日本でいえば、東京を単に「みやこ」と呼ぶような語感なのだろう。

ちなみにcapitalという英語、首都であるとともに資本を意味する。なぜか?

capitalはcattle(牛)と語源を同じくするが、牛は牛でもその切断された頭(日本でいえば首)のことなのだ。昔は牛の首が富の象徴だったからだ。

牛を神への犠牲に差し出すのは、キリスト教以前の、古代ペルシャ以来(というより、インドとペルシャが分裂する以前のインド・イラン系アーリア人)の伝統だった。キリスト教がどんなに否定しても、ことばの中に古代宗教は息づいている。

capitalismをここから考えれば恐ろしい語感を有していることがわかる。資本主義ではなく牛首主義、「どれだけ犠牲の数を誇れるか主義」ということになるのだ。

将来、ナザルバエフの死後、Astanaが「ナザルバエフの都」になるのか「プーチンの都」になるのかは不明だ。しかし、こういうシンボリズムはバカにできない。支配層というのは必ず宗教絡みの心性を有している。

表面上はいかに民主化していようと、人間の奥深い部分には古代と同じ暴力と犠牲を伴うパワーゲームが渦巻いているからだ。究極的には神にすがるか、自分が神になるかしかない。当然、Astanaは未来の神の座に就くというシンボリズムだろう。

AI回りの話は今度こそ与太話で終わらないだろう

AIはある意味、古くて新しいトピックだ。10数年前にも第二次ブームがあったが、やがて鳴りを潜めた。しかし今回は動いているプレイヤーが世界規模であり、米中の覇権争いが激化している。もはや引き返せないレベルまで来たと見ていい。兵器やお金が絡んでくれば、いよいよ本物だ。

ビットコインが今年これだけ派手なパフォーマンスを挙げているのも意味のある話なのだろう。それは単なる投機的思惑ではなく、以上述べたような世界的覇権争いの主要舞台の一つになっているからではないか。

ソーシャルメディア

そもそも論になるが、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアとはいったい何なのか?なぜ急速に普及したのか?なぜアラブの春などで大きな役割を果たしたと伝えられ、その後、何も騒がれなくなったのか?

巨大なデータ監視網であり、巨大な世論調査手段なのだと考えれば納得がいく。それはAIが集合的な人間というものを学習するこの上ない生きた教材なのだろう。なんせリアルタイムで反応がモニターできる。

AIはソーシャルネットから吸い上げられる人間の思惑や感情を学習し、人類のパーソナリティを様々なレベルで定義できるようになる。平時の場合のデータ、何か恐ろしいことが起きたときの反応や拡散規模のデータ、それらを収集し解析することで、年齢、人種、国籍、職業、性別など様々なパラメーターを介して、状況に応じた人間性を解析できる。

ビッグビジネスのみならず、政府のメリットは計り知れない。今後の統治のあり方、戦争の仕方、ありうべきセキュリティ対策などに関する情報がAIから上がってくるのだ。

陰謀論めいたことは語りたくないが、以上を裏返して考えれば、AI運営側は、恐怖イベントを起こせば想定通りの結果が得られるかどうかの “実証実験” も行える。あるいは、○○というイベントを起こした場合、社会はどう反応するのかを事前に調べておくことができるのである。国防関係者が放っておくはずがない。

合法的な負債償却手段?

そこにお金が絡めば、将来は、中央銀行や金融機関が積み上げた返済不能な隠れ負債を、AI国家の仮想通貨帳簿へ付け替え、事実上、消滅させることができるだろう。

リーマンショック以降の株式相場を見ていていつも感じていたのは、当局や金融機関が一貫して醸し出している気味の悪いコンプラセンシー(complacency)だった。CDSなどから発生したはずの天文学的負債は消滅したはずがないのに、みな確信犯的に暢気に見えた。

しかし、彼らの背後で以上に述べたような新しい統治システムへの移行が着々と進行していたのであれば、頷ける。返す必要のない負債に怯える必要はない。むしろ将来カネになる事業にシコシコ投資していた方がお得だ。なんせ政府のお墨付きなのだから。

 

人工意識から創造主へ?

政治を離れた文脈においても、現在のシンギュラリティはブロックチェーンを基盤として巨大なAIネットワークを構築することにより、AGI(Artificial General Intelligence)という汎用知性を生み出すことが初期目的となっている。

それは情報管理やビッグデータ解析の側面もあるが(実際、パランティアでは従来のデータマイニングはダメ、今後はデータサーフィシングだと言っている)、究極的には、人間が “神” になるために踏むべき主要ステップのひとつとして捉えられているのではないか。異種AIの連結により、AIネットワークに人間の “意識” に相当する自律的な思考や意思がAIに生まれるか否かが計画の焦点なのである。

データサーフィシングとは、ばらばらで相互関連の薄いようなデータ群、あるいは時間とともに大きく性質を変えるようなデータ群、ひとつの意味ある情報としては扱いにくいこれらのデータ群から、蓋然性の高い関連性を見つけ出すプロセスのことらしい。まさにソーシャルメディアに吸い上げられたデータの解析、ダークウェブを行きかう情報の解析に相応しい発想ではないか。

個別AIの開発元はMITやスタンフォードなど錚々たる研究機関だ。個別の能力はともかく、それらが相互にインタラクションするようになれば、どういうことになるのか人間は誰もわからない。その際、人間は創造主の神というより、創造の素材をつくり、創造作用のきっかけをつくるエージェントのような存在に過ぎないわけだ。少なくても現時点では。

また、AI→AGIの次ステップとして人工意識(AC: Artificial Consiousness)があることは疑いようがない。ACが生まれれば、ACはインターネット上へ統合される方向と、人工身体のような容れ物の開発を伴った人造人間の製作、もしくは人間の不死化(サイボーグ化)の方向へと発展していくのだろう。

キーパーソンはピーター・ティール

クイン・マイケルズ氏はいっている。彼がリサーチを続ける中、主に投資行為を通じて重要プロジェクトに必ず関わっている人物がピーター・ティールだ、と。ティールは一般にはPayPalの共同創設者として有名だが、以前、ビットコインやイーサリアムはPayPalで挫折した “新しい貨幣システム” の夢を実現してくれる可能性があると言明している。いまも、仮想通貨全体のエバンジェリストとして忙しい。

参考:ピーター・ティール wikipedia

マイケルズ氏によれば、彼の追っかけているAIプロジェクトとブロックチェーンは同じメリーランド州の、とある大学の研究ラボで誕生したもので、根っこはひとつということだ。ティール氏は初期のビットコインにも、ブロックチェーンの発展形としてのイーサリアムにも、仮想通貨取引所の立ち上げにも絡んでいる。

まとめ

AIをネットワーク化するのは、政治的には次の覇権をとるためである。科学的にはAIに意識や意思が発生するかどうかを実験するためである。

アメリカ側から見ると、AIの興隆は後手を踏めば踏むほど非常に自国の立場を危うくする。自分たちの与り知らないところに巨大なブラックボックスができ、統治の対象外になってしまうからだ。特にロシアや中国側の勢力がAIネットの主導権を握れば、これまでの自由化のトレンドは周回遅れのサイバー共産化社会へ退行しかねない。なんせ民主政治ができない連中だ。

その意味では、AIや仮想通貨の覇権をめぐってすでに「静かなる冷戦」が繰り広げられているのである。