相場ティップ(トレードのヒント):テクニカル編
イニシャルレンジ、SQ値など、知っていると役に立つテクニカルの集成。相場ティップ(トレードのヒント)でもあります。
- 1. マクレラン・オシレータ(2019.01.09)
- 2. 市場全体の健全さを計る指標 Value Line Geometric Index(2018.10.27)
- 3. アイランド・リバーサル(2018.10.10)
- 4. ブレークアウェイ・ギャップとランナウェイ・ギャップ(2018.9.21)
- 5. 週足で見るアベノミクス相場(2018.9.14)
- 6. イニシャルレンジ(IR)について(2018.6.13)
- 7. SQ(特別清算)値について―「相場はSQ値を記憶している」(2018.6.8)
- 8. ローソク足で見る相場のリズム(2018.6.6)
- 9. ジャーゴン:バックテストについて(2018.6.1)
マクレラン・オシレータ(2019.01.09)
マクレラン・オシレータ(NYMO)は市場の勢い(買いが強いのか、売りが強いのか)を計る指標です。詳しいことは、以下のページの解説をご参照ください。
以下のツイートでもご紹介したように、このマクレラン・オシレータが昨年末のクリスマスから年初の短期間に、滅多にない急騰を見せました。60年代以来の差し引き200を超える急騰だそうで、クリスマスが株の大底だった可能性が高まっているのです。
・・・つまり、こういうことです。米中貿易戦争だ、政府閉鎖だ、利上げし過ぎだ、景気後退だ、ベアマーケット入りだ・・・と売りネタが連鎖してセンチメントが売りに傾きすぎたのです。でもマクレラン・オシレータは正直で、下げ圧力が強いなか、大口の投資家は涼しい顔で株を買い集めていたから、これほどまで急激に数字が跳ね上がったわけです。
相場は多数派の乗ったボートは沈むようにできていますので、いまは買いどきだという結論になります。
市場全体の健全さを計る指標 Value Line Geometric Index(2018.10.27)
今回は、Value Line Geometric Index(XVG)という市場全体の健全さ(market breadth)を計る株式指標を紹介したい。説明を飛ばしたい人はチャート部分へジャンプされたし。
大局判断の補強材料
XVGの詳細については後で説明するとして、なぜ日経平均やダウだけではダメなのか?
別にダメではないが、判断材料としては不十分なのだ。日経やダウに加えて市場全体の健全さを図る指標があれば、より確実に大局的な情勢を判断できる。現在は、まさにそういう大局的な判断が求められているタイミングだ。現在進行中の調整がベアマーケットの始まりなのか、中期的な価格調整に過ぎないのか?ここを見誤りたくない。
cap-weighted index
そういう大局判断の必要な場面で、日経平均やダウのようなcap-weighted indexのみに頼るのは危険だ。というのも、cap-weighted indexは「時価総額の大きな銘柄の比重が高く」「時価総額の大きな銘柄が全体の価格に与える影響が大きい」指標である。つまり大型銘柄の動きが目くらましになって市場全体の状況がよく見えないのである。
たとえば、ナスダックが最高値を更新したといっても、大型銘柄が絶好調で、他銘柄はぜんぜん上がっていないかもしれない。そのような場合、市場全体は健全とはいえない。逆に、大きく指標が下げたとき、大型銘柄に出た売りが価格を押し下げ、他銘柄はそれほど売られていない(むしろ買われている)のかもしれない。そうした場合、市場全体は「上げるためのマグマを貯めている状況」にあるだろう。
本筋論でいえば、投資家たる者、つねに市場全体の健全さを意識すべきなのである。
Value Line Geometric Index(XVG)とは何か?
XVGはふつうの投資ポータルなどでは見られないが、stockchart.comで見ることができる。最新チャートについては以下のリンクをクリックしてほしい。
- XVGはValue Lineという投資顧問会社が算出している株式指標。
- Value Line社では1~5の5段階(1が最上級、5が最下級)に銘柄をランクづけ、全体で1700銘柄の株価をもとにXVGを産出している(銘柄の構成は決算期ごとに微調整される)。
- XVGがcap-weighted indexともっとも異なるのは、構成銘柄全体の動きを正確に反映させるために、全銘柄の相乗平均(geometric mean)に基づいている点だ。これによって時価総額の大きな銘柄に左右されない、銘柄全体の動きがより精確にチャートに反映される。
- Value Line社ではValue Line Arithmetic Indexという相加平均のチャートも作成しているのだが、そちらは今回の話とは関係がないので無視する。
通常人が平均値というとき思い浮かべている平均は相加平均(arithmetic mean)という。相加平均と相乗平均の違いを表せば、次のような式になる。
arithmetic mean(相加平均)
geometric mean(相乗平均)
VGXチャートによる長期判断
下のチャートは2017年5月時点のXVGとSPX比較チャートだ。
XVGの500ドルという水準はかつての長期抵抗をブレークした重要な場所。SPXが赤の矢印で結んだ(この時点での)前回高値の時点で、この500ドルマークを少し上回った。そして今回SPXは最高値を更新しただが、XVGは前回並みの水準にとどまっており価格上昇に見合っていない。そこから次のような判断が出てくる。
- これ以上、市場全体が押し上げられる可能性は低い(=そろそろ調整に入るだろう)。
- 調整はOKだが、その際、ブレークした500ドル水準を維持することが望ましい(=長期的ブレークが巻き戻される事態は経済崩壊の示唆)。
現在のVGXチャート
その後実際にどうなったかといえば、少し遅れて2018年初に価格調整が始まった。調整中もXVGは500ドル水準をきっちり維持していた。ブルマーケットの健全さが証明されたのである。
そしていま、アメリカ市場は今月初めの史上最高値から崩れて大きく調整している。ただ、XVGから判断する限り、歴史的なブレークアウトを果たした500ドル台前半を再テストしているだけだ(2018.10.26金曜終値は518ドル台)。
現状判断
- 現時点では、いまの調整はベアマーケットの始まりではなく、2009年以来の長大なブルマーケットに年一度くらい発生する「健全な」調整局面と判断できる。
- 今後かりにXVGが400ドル台へ巻き戻されるようなことになれば、判断を覆す。それは景気後退どころか、経済崩壊とも呼ぶべき歴史的事態が進行していることの示唆だからである。
アイランド・リバーサル(2018.10.10)
前のエントリで解説したように「ブレークアウェイ・ギャップ」と「ランナウェイ・ギャップ」の合わせ技で強力な上昇トレンドを続けていた日経は、10月に入り息切れ。高値は1991年来の22445円。四半世紀ぶりの新高値となった。ここがアベノミクス相場の頂点となるのかどうかは、アイランド・リバーサルが実現し、トレンドが上昇から下落に転換するかどうかにかかってきた。
上のチャートに見るように「ブレークアウェイ・ギャップ」と「ランナウェイ・ギャップ」が終息すると、アイランド・リバーサルが出現しやすい。
アイランド・リバーサルはトレンド転換(天井または底入れ)の指標のひとつで、信頼性はあまり高くないといわれるが、気にしておいて損はない。なぜ信頼性が低いかというと、一定期間の時間をあけて窓を埋めにいくことが多いから。
今回の場合は、上のチャートでいうと、ランナウェイ・ギャップとエクゾーション・ギャップ(息切れ間近に乗り遅れ組が飛びついて作るギャップ)が重なったかたちになる。
上昇⇒ブレークアウェイ・ギャップ⇒
上昇⇒ランナウェイ・ギャップ⇒
上昇⇒エクゾーション・ギャップ⇒
上昇(天井)⇒
下落(調整)⇒ダウンサイド・ブレークアウェイ・ギャップ(下方へのブレークアウェイ・ギャップ)⇒
揉み合い⇒下落再開(トレンド転換)
現状の日経平均 現物日足
できればトレンド転換は避けてほしいところだが、かりに下落再開にとなっても22900-23000を維持できれば、中長期的には問題なしと見る。20年越しの水準をブレークウェイ・ギャップで切り抜けた強さは「お告げ」だと思う。
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ブレークアウェイ・ギャップとランナウェイ・ギャップ(2018.9.21)
日経は北海道地震(正式には胆振東部地震というらしい)後に底入れしてから一気に23000を突き抜け、二度のギャップアップを見せた。その後も現在までギャップを埋めに行く気配は見せていない。滅多に見られない「ブレークアウェイ・ギャップとランナウェイ・ギャップの強力コンビ出現」の可能性がある。
強いトレンドの発生
ブレークアウェイ・ギャップとランナウェイ・ギャップは強いトレンドが発生したときにしか起こらない現象。下の例を見るとわかりやすいが、まずブレークアウェイ・ギャップで下降トレンド(もしくはレンジ相場)を一気に終わらせる。break awayとは「過去にサヨナラ」の意味になる。
その後しばらく普通の上昇トレンドになった後、さらにギャップアップしてそのまま駆け上がることをランナウェイ・ギャップ(またはランナウェイ・ムーブ)という。ran awayとは「未来にまっしぐら」の意味になる。
この2つがコンビで発生することは滅多にない。現状窓埋めしていない日経はブレークアウェイ・ギャップの条件は満たした。焦点は、この後、どこかのタイミングでランナウェイ・ギャップが発生するかどうか。もし発生すれば大相場になる。
日経平均 現物日足
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週足で見るアベノミクス相場(2018.9.14)
2015年にユーロ危機でミニベア相場を演じた以外は、階段状の上昇⇒踊り場のヨコヨコ⇒上昇再開というリズムで来ている。サポートは50WMAもしくは75WMAであることがわかる。今回もほぼ50WMAで調整は終わっている。
- 一般にブル相場では、26WMA、50WMA、75WAM、200WAMAが重要な目安として機能する。
- 軽い調整は26WMA、中期の調整は50WMAまたは75WMAがサポートとなって折り返す。
- ボリンジャーバンド(BB)が収縮すると(=コンソリデーション=高値保ち合い)、バンドを押し広げる上昇の動きが始まる。
- 昨年末から今年年初にかけての急騰の反動で、ここまで7か月ほどヨコヨコ調整をこなしてきた。そろそろ上に放たれるタイミングと思われる。
- 200WMAを明確に割ったときブル相場は終わる。
日経先物 週足
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イニシャルレンジ(IR)について(2018.6.13)
日中、寄り後にできた最初のローソク足の「高値と安値の差」をイニシャルレンジ(IR: Initial Range)と呼ぶ。
- 先物が8:45始まりになって以降、チャートサービスによっては60分足を8:45-9:44で計算するものがあり、多少差が出る。基本は9:00-9:59の足だ。
- イニシャルレンジを60分足でなく15分足(9:00-9:14)、30分足(9:00-9:29)で見る人もいる。一概にどれが正解ということはなく、その人が多用する(あるいは使いやすい)タイムフレームのものを見ればよい。
では、イニシャルレンジは何に使うのか?個人的には「相場の勢いを見る」ために使うのだと思う。
レンジをすぐブレークする勢いがあるのか、ないのか?レンジは大きいのか、小さいのか?ボラタリティが高いのか、低いのか?
ボラタリティ(volatality)とは、値動きの激しさをいう。短時間で大きく動くときボラタリティが高い、略して「ボラが高い」「ボラがでかい」という。逆に値幅が小さく動きが鈍いときボラタリティが低い、あるいはボラタリティがない、略して「ボラが低い」「ボラがない」という。
ブログ主はふだんあまりIRを見ていないが、昨日のように神経質な展開をしている場合(あるいは朝の値幅が大きい場合)には意識する。
原則、イニシャルレンジはその当日限定の指標だと理解する。しかし昨日から今日にかけてのように、値段がずっとイニシャルレンジ内に閉じ込められている場合は、はらみ足のような感覚で意識しておくといいかもしれない。今回の場合は、SQ値@22825をレンジ内に含んでいるので揉み合い(売り買い交錯)になりやすいだろう。
具体的な説明については、以下の、本日(2018.6.13)日経先物60足チャートを確認してほしい。
※上のボックスをクリックすれば、別窓に拡大チャートが出ます。
SQ(特別清算)値について―「相場はSQ値を記憶している」(2018.6.8)
テクニカル分析で、移動平均線やオシレーターなどの指標に加えて見ておきたいのが毎月のSQ値だ。
インチキに見えてインチキじゃない
SQ値(毎月第二金曜の寄りで決定、今月の場合は今日6月8日)は、たいがい前日の終値より跳ね上がるか跳ね下がるかでインチキに見える。だが当初はインチキでも、その後に影響するので意識する習慣をつけよう。
影響は数日後に出ることもあれば、数か月後に出てくるときもある。数か月も経つと忘れているので、メモなどしておくといいかもしれない。ブログ主も後で気づいて「そうだったのか」と思ったことが何度となくある。
短期的な見方
朝にSQ速報値が出た後、その日の日中終値がSQ値を上回るようであれば、相場は相当強い。黙って買いだ。
SQ値より安く終われば、慎重になるべきだ。ただ、即ショートのタイミングとは言えない(デイトレを除く)。翌日、数日後にSQ値をテストしにいく可能性があるからだ。
中期情勢
中長期的な視点でいうと、2018年はいまのところ年初が上のピークで、翌2月が下のピークになっている。
“相場はSQ値を記憶している” から、今後「もう一度試すときが必ず来る」と思う。頭の片隅にとどめておこう。
とくに上の23723はここを超えれば、完全に長期の半値戻しを超え、大相場になる敷居だと思う。
SQ値の移動平均
通常の移動平均線ではなくSQ値の移動平均線は、大きな流れを見るためにチェックしている。
半年、9か月、1年の3本だ。
現状どうなっているかといえば、6か月線が寝てきて9か月線に追いつかれようかという状況だ。これは今後、もたつく兆候(横軸32-34あたりの動き)か、あるいは大きく調整する兆候(横軸9-12あたりの動き)かもしれない。
ただ12か月線はずっとサポートになっており、よほどの変化がない限り上昇相場は終わっていないと判断できる。だから、大きく調整すれば、そこは買いの一大チャンス!ということになる。
ローソク足で見る相場のリズム(2018.6.6)
ローソク足の色だけで、けっこう相場の状況判断ができたりする。
15分足の場合
たとえば、下は日経先物の15分足チャート。15分足ではローソク足4本をワンセットで見るクセをつけるといいかもしれない。
- ローソク足4本をまとめて見るということは、実質、60分足1本の中身を詳しく見ているようなもの。タイムフレームを60分足に切りかえたとき、その中身を知っていると相場の強弱の判断に役立つ。同じ60分足陽線でも、グダグタ上下しての陽線なのか、きれいな15足陽線続きの陽線なのか。そういったことがわかるからだ。
- 強いトレンドがない場合、4本連続で陽線(みどり)ならいったん上昇が止まる確率が高い。逆に4本連続で陰線(あか)なら下落(調整)が止まる確率が高い。
- 強いトレンドが出ている場合、5本以上の陽線または陰線が連続することもある。
- 経験値からは10本連続が限界。15分足10本といえば150分、つまり1時間半だ。1時間半上げ続けるエネルギー、そこで行きかうマネーの量は相当なものだ。
- 5本以上の連荘はむしろ下落トレンドのときに多い。恐怖は相場の王様だ。急騰の欲望に勝る。相場が心理戦といわれる所以だ。
- もっと頻度が高いのは1本か2本陰線を挟んで再上昇するケース(逆に陽線を挟んで再下落するケース)。
- トレンドがなく凪の状態にある場合、ローソクのボディが寸詰まりになったり、十字線(始値と終値が同じ価格でボディがない足)になったりで、色だけでは判断がしにくくなる。その場合でも細かく見ていれば、この4本セットが機能していることがわかる。ただ、そういうときは時間の無駄なのでトレードしない方が賢いのだが。
※上のボックスをクリックすれば、別窓に拡大チャートが出ます。
60分足の場合
基本的な見方は15分足と同じなのだが、こちらは4本ワンセット単独というより、「4本ワンセットが2セット連続」というように長めの視野で見る必要がある。
上昇トレンドの場合、当然、陰線の数は減る。よくあるのは1、2本陰線(もしくは十字線)が出て再上昇するケース。もし陰線4連続など出ようものなら、目をつぶって買いである。
もちろんトレンドが転換した可能性もある。そうなったら潔く損切りだ。
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ジャーゴン:バックテストについて(2018.6.1)
これはトレンド転換時の値動きをいう。時間足に限らず、日足や週足にも見られる現象。
どういう動きか?
下降トレンドラインを上にブレークした場合、そのまま上昇していくことは稀で、もう一度ブレークしたトレンドラインまで下落して、「いいんですか?」と確認するのである。底固めの動きともいえる。
このブレーク→調整の動きをバックテストといっている。
バックテストに合格すれば、トレンド転換に成功して上昇していくことになる。失敗すれば、フェイク・ブレークアウトということになってトレンド継続(下落継続)である。
出来立てほやほや(2018.6.1夕刻時点)の、日経平均先物60分足の例を示そう。
一度ピンクの下降トレンドラインを上抜けてから下落して、もう一度ラインにタッチしていることがわかる。このチャートの時点ではバックテストに合格、上昇に転じたと判断できる。
上昇時も理屈は同じだ。上昇トレンドラインを割り込んでから再上昇し、トレンドラインを抜けるかどうか、もう一度試しに行くことが多い。上抜けず下落に転じればトレンド転換(下落へ転換)、上抜けるようであれば、上昇トレンドは継続していると判断する。